学生の相談

 昨日と今日はA大学で授業でした。昨日の授業が終わった後に講師室に戻ろうと、学内を移動していたところ、学生さんに呼び止められました。2年前に授業を担当していた方(2人)でした。近況報告などを聞き、充実した学生生活を送っている模様。二人とも教員免許を取得していて、実習先が決まったこと、そのうちのお一人は本気で教員を目指す決心をしたと話してくれました。非常勤講師という立場なので、基本的には授業での関わりですが、こうして数年経っても近況などが聞けるのは、とても嬉しい限りです。しばらくお二人の学生さんと話をしたあと、そのうちのお一人と向かう方向が一緒だったので、道すがら話してました。話が止まらず、結果的に立ち話に。その学生さんの話を聞き、大学生にとっての相談の場や機会について、改めて気づかされたことがあったので、そのことについて、書きたいと思います。

「●●相談室」は敷居が高い?

 大学には、キャリア相談室や学生相談室といった、学生が相談できる場が設けられていると思います。プロのキャリアカウンセラーやカウンセラーに相談できるので、学生にとって、とても良いサービスだと思います。ただ、ハードルが高いようで、足を運びにくい面があるようです。
 その理由の1つは、高校までだと、カウンセリングルームや保健室は、特別な場所、特定の人が利用するものというイメージが強いことでしょう。奥まった場所にあることが多く、行くとかえって目立ってしまうので、よほどの時しか利用しないと言う意見を、中高校生や大学生から聞きます。
 2つ目の理由は、高校までは、日頃のことや進路の相談は、担任教諭、または関わりのある相談しやすい教員にすることが多いということでしょう。特に、担任の先生とは毎日顔を合わせるので、何かあれば気軽に相談できる状況ですし、場合によっては先生から声をかけてくることもあります。
 そういった学校体験をしてきた大学生にとって、大学という場には、高校までの担任の先生のような存在がなく、誰に相談したらよいのか戸惑っているのではないかと感じます。深く悩んでいるわけではないが、友達ではなく大人に相談したい、しかも自分のことも、大学のことも分かっている人がいいと思った時に、ちょうど良い人がいないのです。その結果、知らず知らずのうちにストレスを溜めてしまうと、昨日話した学生さんは話してくれました。

非常勤講師が一授業担当者としてできること

 大学生にとって、高校までの相談先(担任教諭+α)に相当するのが、ゼミの先生ないし授業を受け持っている先生ではないでしょうか。授業に関しては、専任・非常勤とも担当しています。ただし、大学側は、それをあまり認識していないと思います。その証拠に、学生の相談にのって、大学につなげたケースがありましたが、専任の先生から感謝の言葉と共に、「先生の業務外なのに申し訳ありません」とお詫びをされたことがありました。確かに、非常勤講師は授業に対する対価としてお給料を頂いている訳ですが、教育サービスを受けている学生にとって、授業担当者である非常勤講師は、高校までに近い相談窓口なのです。学生さんの相談を受けるのは、個人的に好きなことなので、授業の前後などに応じたり、アポをとってもらえば対応することにしています。

非常勤講師が学生相談に応じるシステムの整備

(1)パイプの役割
 一授業担当者として、個々の学生の相談に応じることはできますが、それだと、自分から相談してくる学生がいて、それに応じる教員がいなければ、成立しません。大学生だから、自発的にするのが当然だという考え方もあります。一方で、非常勤講師のほうも、相談に応じたいが、業務の範疇を超える、つまり授業時間外になるので、どの程度受け付けて良いのかと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。私の場合は、授業前後のちょっとした対応については応じていますが、学生さんから相談を持ちかけられた場合、それに応じてよいかを、専任の先生など大学側に確認するようにしています。相談内容によっては、当該学生に別の窓口を紹介します。授業を担当するということは、関わる学生の様子はよく分かるものです。学生にとって、よりふさわしい場につなぐことも、業務の一つだと考えています。どのように学生と相談する場をつなぐか、ある程度ルール化しておくと、非常勤講師の側からもアクションが起こしやすいと思います。

(2)相談のために利用できる場所の確保
 授業に関することなど、学生さんから相談を持ち掛けられる場合、大学側の問題ない範囲で、可能な限り応じたいと思っています。ただし、その場合に困るのが、相談をする場所の有無です。非常勤講師は研究室がないので、どこで相談するのがいいのか、困ることがあります。A大学の場合、事前に予約をすれば、非常勤講師でも面談スペースが利用できます。これは学生にとっても、とても良いシステムだと思います。よく、個々の学生さんとの面談に利用している先生を見かけます。非常勤講師も利用できる相談スペースがあると、より学生さんとの信頼関係ができ、教育面でも相乗効果があるのではないでしょうか。