研究者として工夫していること―研究時間の確保について―

 大学非常勤講師の場合、担当するコマ数は、人によって、あるいは専門分野によっても違いがあると思います。私の場合、月~木曜日が大学での非常勤講師+αの仕事、金~日は自分の研究や調査、翌週の授業準備、学会や研究会への参加に充てています(もちろん、休息を含むプライベートな予定も)。

 大学非常勤講師というのは、担当する講義に対してその対価をいただく仕事ですが、各専門分野の研究者ないし専門家・実務家です。私は教育学が専門ですが、少し前まで実務家であり(後述)、現在は研究者ということになります。今日は非常勤講師の研究者の側面について書きたいと思います。非常勤講師が研究を行うには、制度面・資金面・環境面等においてまだまだ解決しなければならない問題点がありますが、今日は研究時間の確保について、自分なりに工夫していることを紹介します。

 

研究の時間

 

 先ほど書いたように、講義がない金~日曜日は、可能な限り研究に充てるようにしています。ただし、今学期は新しい授業が2コマあるのと、リアクションペーパーの類のチェック(コメントや次回の授業に反映)に時間を要するので、丸一日以上は授業の準備に費やすことになります(リアクションペーパーについては、別の機会に)。プライベートなことや予期せぬ予定が入ると、研究の時間はさらに削らざるを得ません。そうは言っても、専任教員とは違い、授業以外の学内業務はほぼないので、非常勤のほうが研究時間を確保しやすいと思います。

 何とか時間を捻出する方法はないものかと、日々のスケジュールを再点検してみたところ、移動時間の占める割合が多いことに気づきました。これは複数の大学に行き、場合によっては大学を梯子する非常勤ならではかもしれません。ただし、移動はラッシュと重なることも多く、研究室がなく荷物も多い非常勤にとっては、研究の資料等を持ち歩くのも容易ではありません。でも、この時間を使わない手はない、何とかしたいと思ったのでした。

 

「3分あれば研究する」という言葉に感化され…

 

 実は、いくつかの職業を経験して、大学の非常勤講師をすることになりました。直近の前職は学校現場の教員でした。現場の教員をしながら研究をしていた時、絶対的な時間がないことはもちろんですが、一番の悩みは思考する時間が取れないことでした。目の前の生徒が最優先ですから、当たり前です。目の前の生徒と向き合いつつ、どうしたら研究の時間を確保できるかと思い、指導教授に相談しました。先生の答えは、「3分あれば研究する」でした。細切れの時間だから、何もできない、考えを深められないと決めつけていた当時の私には、目から鱗でした。

 

スマホをフル活用

 片道1時間~2時間ほど移動に時間を要するので、その時間に何ができるかを考えました。ラッシュに重なると、本すら読むのが難しいことがあります。今までは混んでいる時は頭の中で思考するだけで、電車が空いている時は、フィールドノートを兼ねた「研究ノート」(研究に関することを書き留めておくノート)に気づいたことや思いついたことなどを書いていました。電車の中では字がうまく書けないこともあり、あとで読み返してみると、何を書いたのか良く分からないことも。そんな折、スマホで書けばいいのではないか?ということに気づきました。最初はメモ帳機能を使っていましたが、家に帰ってパソコンで作業をする都合から、自分宛にメールを送ることにしました。メールは途中まで書いたら保存しておけばよいので、やってみたらとても便利でした。移動中に、いいアイデアが浮かぶことがあるので、続けてやっています。メールのタイトルを変えれば、違う作業も同時並行に進められるので、混乱も避けられます。あまり電車が混んでいない時や座れる時は、本などの引用したい箇所をメールに書き込んだり、史料を翻刻したりしています。これをするようになってから、自宅に帰って自分宛のメールを文章に張りつけて手直しするだけでいいので、非常に効率が良くなりました。移動は乗り換えも多いので、「○駅から△駅までは、引用箇所の入力」など、電車に乗っている区間ごとにやる作業を決めておくと、集中して終わらせることができるので、かえってまとまった時間があるときより、はかどる場合があります。

 

 研究が好きでこの仕事を選んだので、研究に時間が割けるのは幸せなことです。その成果を、日々の授業に反映したり、論文・著書といった研究成果として還元できるよう、努めたいと思います。今日は、日常的な工夫を書きましたが、今度は調査時のことについて書きたいと思っています。