教員免許更新講習を受講してみて

先週の月~金まで、教員免許更新講習を受けてきました。この講習は、教員免許を持っている人が、取得から10年に一度大学等で講義等を受けて、単位を認定されることで、教員免許を維持するためのものです。この講習を受講して単位が認定されないと、教員免許の効力が失われ、教員を続けることができなくなってしまうので、教員にとって教員免許更新講習を受講することは重要なミッションです。

私の場合、今回更新しないと、今度の3月末で失効してしまうので、更新講習を受けることにしました。ただし、現在は中・高の教員ではないので、失効しても今の仕事には支障がなく、是が非でも、今年度中に更新講習を受けなければならないわけではありません。ですが、2つの理由から更新講習を受けようと思いました。

** 失効を免れる以外に、教員免許更新講習を受けた2つの理由

一つ目の理由は、「教員免許更新講習制度」のことを、大学の授業で教えているからです。もちろん、この制度のことについて、その経緯や制度の中身等の知識はありますし、実際にすでに受けた先生に話を聞いています。その知識や話を聞いたことに基づいて今までこのことについて扱っていましたが、やはり自分が経験したほうがよりよく分かるし、何といっても、手続きの仕方含め、学生さんに具体的に話をすることができると思ったからです。

もう一つの理由は、「明日は我が身」だからです。教員免許更新講習の講師は、原則、その講習を行っている大学の教員が担当しています。専任の先生が多いですが、非常勤でも担当することがあります。実際、今回私が受けた講習も、専任の先生だけでなく、非常勤の先生もいらっしゃいました。…ということで、私が授業を担当している大学の中に、免許更新講習を行っている大学があるので、近い将来担当する可能性があります。そうなった時に、どのように講習をしたらよいか、また受講している現場の先生たちはどんなことを感じ、どんな講習を求めているかをぜひ知りたいと思ったからです。

このような思惑で受講をしている人は、私以外にはいないのではないか?というくらい珍しい理由だと思います。ですが、失効を免れる以外にも目的があったので、私にとって本当に大きな収穫があったと思っています。

教員免許更新講習の詳しい体験談は、別の機会に詳しく書きたいと思っています。今回は、大いに収穫があった講習がどんな感じだったか、興奮冷めやらぬうちに紹介したいと思います。

** 教員免許講習の実際
私が受けた某大学では、月~金までの5日間(毎日9:30~17:00。間に休憩が入りますが、2時間×3コマ)でした。選択科目から18時間、必修・選択必修科目から12時間、計30時間の講習を受けます。以下に示した講座を受講しました。

  • 1日目:【選択】教育改革における小学校社会科授業のあり方
  • 2日目:【必修】教育の最新事情Ⅰ
  • 3日目:【選択】社会科、公民科、商業科の授業における現代企業の教材化とその指導方法
  • 4日目:【選択必修】教育政策からみる学校現場の子どもと教師
  • 5日目:【選択】人文地理学の諸問題について

2日目以外の講義は、お一人の先生が担当されていました。2日目は、3人の講師の方が、それぞれのご専門の立場から1コマの授業をされていました。
この大学の場合、選択科目が教科教育に関係するものが多かったのと、大きなテーマのものだと、定員が埋まって受講できない場合があり、私の場合、すべて教科教育のものを選択しました。

定員が設定されていますが、必修・選択必修以外は大人数ではありませんでした。1日目が30名弱、3日目と5日目は10名ほどでした。少人数で受講できる科目があったのは良かったと思いました。

** 受講して感動したこと
①講師の先生方の熱意
受講する側にとって、原則として教員免許を更新できればいいので、この講座の内容に過度に期待しているわけではありません。一方で、担当する講師の先生方も、制度上行わなければならないのでやっているので、この講習自体に職業的な生きがいを強く感じてやるという性質のものではありません。講師の先生方はそのことを断った上で、

「だからこそ、せっかく受講して下さっているのだから、少しでも(教育現場の)先生方に役立つ情報・知見を提供したい」

とおっしゃっていました。このことは口先だけでなく、講習の内容や講師の先生方の熱意から、ひしひしと感じました。受講している側に飽きさせないよう、映像を駆使したり、ディスカッションやアクティビティ等を取り入れられたり…という工夫はもちろんですが、一番驚いたのは「資料の多さ」です。多い先生だと、2時間の講習につき、B4で30枚ほどの資料を用意されていました。もちろんそれを講習で全部使うわけではないですが、「興味がある方はゆっくりみてください。よかったら、学校の授業で使ってください」という言葉と共に、大量の資料を配布されていました。教科教育に関する講座の場合は、そのまま学校現場で使える資料をくださった先生もいらっしゃいました。

②現場の教員へのエール
現在の教育現場は、非常に多忙化し、業務内容も多岐にわたり複雑化しています。現場の教師たちはそれに奔走されていますが、それがなぜなのか?という大きな背景を、どの講師の先生も、非常にかみくだいて、丁寧に話してくださいました。現場の教師たちが大変な思いをしていることに寄り添いつつ、どうそれをとらえたらいいのか?どう乗り越えていったらいいのか?を話していらっしゃいました。講師の先生の大半が大学の教員、つまり研究者ですが、教育現場にすべて委ねて自分たちは研究を…というスタンスではなく、研究の結果明らかになったことを、現場の教師たちにかみ砕いて説明し、一緒にどう教育問題を解決していけるのか?そして、「先生方は子ども第一でいいんだよ」という視点で話をしてくださっていました。研究者と学校現場の教員は、なかなか交流する機会は多くないですが、そんな研究者の先生方の姿勢を知ることができたのは、本当に嬉しく思いました(一受講生として完全に現場の教師目線になってしまい、応援されている気になりました)。

③授業が面白い!
講師の先生方は、日々大学で教鞭を執られているわけですが、すごいと思ったのが、「授業が面白い!上手!」ということでした。方法論的な部分(ICTの効果的な使い方、レジュメや資料の使い方、活動のさせ方)はもちろんですが、一番すごいなあと思ったのが、専門的な知識を、教育学に普段触れていない人にも分かるように、その背景を丁寧に説明しながらかみ砕いて話されていた点です。自分の大学での授業を猛省しながら、聞いていました。自分で調べるだけではよく理解できず、ましてや学生にうまく説明できずに困っていたことが、大変よく理解できたという部分がありました。早速、秋学期(後期)の授業に生かしたいと思います。

➃研究上のつながり
これは、私のような研究をしている者に限られることですが、講師の先生と研究上のつながりがあることが分かったことです。具体的には、共通の知り合いの研究者がいる、根底の部分で研究関心が近いということです。私は、普段学会等で知り合った研究者の方とも積極的に交流したり連絡をとったりするほうですが、今回も早速その先生と連絡先を交換し、翌日には自分の論文を届けさせていただきました。これは全く期待していなかったことなので、まさに「棚から牡丹餅」でした。その先生のゼミの学生さんが、わたしの研究に近いようなので、お力になれたら嬉しいなと思っています。


教員免許講習は、本当に思惑以上に収穫がありました。本当に受講してよかったと思いました。受講生同士での交流をする機会があまり多くなかったのがちょっと残念でしたが、自分から現場の先生方に話しかけていろいろお話をしたところ、共通の知り合いがいたりと、繋がっていることが分かり、今後またどこかで仕事等でご一緒できる機会があると思うと、とても楽しみになりました。