初めての「ご依頼」

「研究」を仕事にすること、具体的には、「研究」を事業として細々と行うようになってから、1年半ほどになります。ですが、あくまで仕事を請け負う側でした。この度、初めて仕事を依頼することになり、身が引き締まる思いでいます。

依頼することにした仕事は、拙著の校正作業です。現在、博士論文で書いた内容を著書にする作業をしていますが、原稿の分量が多い上に、〆切もややタイトなので、他の仕事をしながら作業が終えられる自信がありませんでした。加えて、自分はおっちょこちょいなところがあるので、できれば校正作業をどなたかにお願いできればと思っていました。

その矢先、研究仲間であり、某研究所での同僚でもある方(以下、Tさん)が、仕事を探していると聞きました。普段彼女の仕事ぶりを見ていて、何でも的確にこなせるし、私が扱っている史料にも精通しているので、彼女ほど適任な方は他にいないと思っていました。またとないチャンスと思い、思い切って校正をお願いできないか頼んでみました。すると、

「私でよければ、いいですよ。ありがとうございます」
と快く快諾していただいたうえに、お礼まで言っていただきました。

お礼を言うのはこちらのほうだと思ったのですが、私も「研究」を事業として始めたばかりの頃に、科研費の関係でお仕事をいただいた時、声をかけていただいたことが本当にありがたくて、もったいないことだとさえと思ったことを思い出しました。


Tさんは、私が1年以上かけて、「”研究”を仕事にすること」の奨めをした方で、今年5月に個人事業主になったばかり。「研究」を仕事にしている一人です。事業主になってまもなく、ある若手研究者が取得した科研費の研究で、史料整理の仕事を任されています。私がお願いする仕事は、彼女にとって2本目になるようです。


先日、Tさんに、納期、おおよその作業内容、お支払いできるおおよその額をお伝えしました。作業にどのくらいの手間がかかるか作業したいと言うことで、試しに1章分をお渡しして、確認していただくことにしました。

このようなやり取りからも、彼女にお願いできて、本当に良かったと思っています。


仕事を他の方に依頼するということは、依頼する側である自分が、その分稼がなければなりません。大変身が引き締まる思いです。事業をするということは、仕事を受けるだけでなく、自分も経費をかけて依頼をすることも必要で、リスクを伴うということを、とても実感しました。

このように、私は今、「研究」を仕事にしていくということを、自分自身を「実験台」にして行っています。実際に自分がやってみて感じたのは、自分が仕事をもらうことだけ考えていては、継続的に仕事を得ることは難しいのではないかということです。自分も仕事を与える側になり、他の方の事業に貢献することを考えて行うことが、安定とまではいかなくとも、事業を続けるポイントなのではないかと思っています。

今回初めて仕事を「ご依頼」させていただきましたが、依頼された側と依頼する側にどんなメリットがあるのか、この仕事を進めながら報告できればと思っています。