嬉しい待ち伏せ

一昨日はA大学で授業でした。今学期は2コマ連続で同じ教室で授業をしているのですが、1コマ目と2コマ目の休み時間に、3年前に授業を担当していた4年生の学生さん(Kさん)が、教室の外で待っていました。私に会いに来てくれたそうです。


Kさん:「先生、お久しぶりです。ここの教室と伺って来ました」
私:「お久しぶりです。元気でしたか?」
Kさん:「報告があって来ました。無事教員採用試験合格しました!」
私:「えー。おめでとうございます!さすが~」


Kさんは、何と現役(一発)で某都道府県の教員採用試験(中高)に合格したそうで、早速報告に来てくれました。Kさんは、私が教職の授業を担当した学生さんで、教員に内定した記念すべき第1号ということになります。

A大学は、2016年4月に大学の非常勤講師を始めて以来、ずっと授業を担当しています。特に今の4年生の大学入学と私の大学での着任が一緒なので、「同期」のような感覚です。

Kさんがこうして教員採用試験に合格に至るまでの心境の変化について、少し説明させていただきます。

Kさんは、社会人経験を積んでから大学に入学された方。入学当時は、教職は選択肢の一つと考えていて、是が非でも教職という希望ではありませんでした。

今から1年ほど前(秋学期のはじめ)に、学内でKさんら1年生の時に授業を担当していた学生さんたちに偶然会いました。簡単に近況を聞き、教職についてどう思っているか尋ねたところ、

「高校生に、英語以外の外国語(Kさんの場合はドイツ語)の存在や魅力を伝え、視野を広げてあげたいので、高校の教員が第一志望になりました」

とのことでした。Kさんはドイツで仕事をしていた方なので、得意なドイツ語をさらに生かす仕事に就くのではないかと、勝手に思っていました。ですが、大学での学びを深める中で、また若い大学生と学生時代を過ごす中で、高校生のうちにいろんな選択肢が持てるよう、自分の経験を生かしたいとのことでした。

私はその話を聞いて、Kさんには是非教員を目指してほしいと思い、「応援しているから、困ったら連絡して下さいね」と伝えて別れました。


その約半年後(春休み中)、Kさんから、教員採用に関して相談があるとの連絡を受け、面談をしました。なんと、3時間半ぶっ続けでお話しました。中高の教員時代を含めても、過去最長の面談時間でした。


相談の趣旨は、私立の学校の採用(ドイツ語教員になれる道)について教えてほしいとのことでした。高校の教員だと、ドイツ語の採用はほとんどないため、英語の教員になるが、それでどうやって自分の経験を生かしたら良いか、分からなくなっているようでした。

Kさんのお話を聞きながら、Kさんの悩みの核心部分って何だろうと考えました。半年前にKさんがキラキラした目で話してくれたことを思い出し、もしかして…と思い、Kさんに聞いてみました。

「Kさんは、ドイツ語が教えられるに越したことはないけど、ご自身がドイツ語やドイツに出会ったことで、自分の人生が開けていったことを、高校生に伝えたいんじゃないですか?そうであれば、担任の先生として、生徒さんたちにその経験を話してあげられるんじゃないですかね?」

Kさんは私の意見を聞いて、

「今まで、そんなこと考えたことがなかったです。そう考えれば、もしドイツ語で採用にならなくても、自分が教師になる意味があると思います」

と言って下さいました。

あの面談から、8カ月。途中上手く行かないこともあったようですが、晴れて現役で教員採用試験に合格できたのは、教員になるという目的が明確であることと、合格に向けての努力の賜物だと思います。

すでに教員の風貌を持ち合わせているKさんですが、きっと生徒さんたちの視野を広げてくれる、素敵な先生になると思います。

本当に、嬉しい待ち伏せでした。おめでとうございます!!