博士号を取る前と後との研究活動の変化

今年の3月に博士号を取得しましたが、仕事に関しては、特別研究員になったことと、非常勤のコマ数が若干増えた以外に変化はなく、これまでと基本的には変わらない日々を過ごしております。

 

ですが、研究面においては、博士号を取る前と後とでは、変化があったと実感しています。博士号を取る前と後とでは、どのように研究活動が変わったかを、お伝えしたいと思います。

博士号を取得する前

個人研究

あくまで博士課程の一学生として研究を進めているので、自分の研究テーマについて、一人で研究を進めるというものでした。つまり、個人研究が中心でした。

 

少ない研究費

研究費をいただける機会も限られていたので、あまりお金をかけることができませんでした。私の場合は、博士課程の3年生までは中高の専任教諭として勤務していたため、必要経費と割り切って、給与の一部を研究費に当てていました。それから、研究費がもらえる場合は貰っていました。例えば、勤務校の助成研究や大学が時々募集する大学院生への研究補助金です。

 

ちなみに、博士在学中に得られる主な研究費は…

①学術振興会の特別研究員(DC1,DC2など)になる⇠難関

②各大学で実施している研究補助金制度を利用する

③民間の助成研究に応募する

知り合いの研究者の研究協力者になる

 

でしょう。

そのうち、私の場合は、②③④を利用させていただきました。①は正規職員をしていたため、応募資格がなく、応募すらできませんでした。本を買ったり調査に行ったりする交通費等がかかるので、研究費をいただけるのは本当にありがたかったです。でも、もちろん金額としては大きいわけではないので、自費で賄う必要があります。したがって、限られた研究費のなかで、やりくりしなければなりませんでした。

 

指導教授による指導

大学院生の最大のメリットは、指導教授から手厚い指導が受けられるということです。学生ならではの特権だと思います。博士号取得後はそういうわけにはいきません。在学中は、指導教授の先生にしっかりご指導いただくことが大事だと思います。

 

博士号取得後

研究費が得られるチャンスが拡大ー研究者番号―

博士号を取得すると、すぐに大学専任教員になれなくても、研究者番号科研費を申請することができる資格のようなもの)を取得できる可能性が高くなります

 

私が在学していた大学院は、博士課程修了と同時に、研究員(有給と無給がある)になることで、研究者番号を取得できます。

 

研究者番号が得られることによって、科研費に応募することができ、その結果審査に通れば、まとまった研究費を得ることができます。大学院生の時はどうしても小規模な研究費になりがちですが、まとまった研究費が得られるので、より大きな研究に取り組みやすくなります。

 

個人研究から共同研究へ

ただし、上記の科研費を得るのは、そう簡単なことではありません。それなりの分量がある書類を整え、申請をして、その審査に合格しないと研究費は得られません。また、小さいテーマよりも大きなテーマのほうが、研究的意義があると判断されやすいため、一人よりも複数人で取り組むテーマのほうが通りやすいとされています。

 

そのため、科研費を取ってチームで研究を進めていくことが多くなります。そうすると、一人の研究と言うよりは、関連する異なる研究テーマを有する者同士で、共同研究を行うというパターンが多くなります。

 

私の場合は、大学院生の頃から関わらせていただいている共同研究に加え、今年は、自分が発掘した史料を用いて、同地域を扱う研究仲間と共同研究を行う方向で、科研費を申請しました。また、数日前にも、もう一本別の研究に、メンバーとしてかかわってほしいと声をかけていただきました。

 

このように声をかけていただけるようになったのは、博士号を取得し、一研究者として認識していただけるようになったからだと思います。

 

博士号を取得する以前のように、指導教授の先生から手厚い指導は受けられなくなってしまいますが、一人の研究者として認識していただくことで、対等な研究者として、互いに切磋琢磨しながら研究を進めていくことができます。また、共同研究という形を取ることで、より大きなテーマにチャレンジできるのです。

 

博士号は、研究者にとって単なる通過点ではなく、新たなステージへの切符だと思っています。