大学非常勤講師の「授業」と、個人事業主の「セミナー」の相違点
大学非常勤講師の仕事と、個人事業主の仕事を両方してみて、気づいたのが…
どっちの立場でも、やろうと思えば同じことができる!
ということでした。
例えば、大学非常勤講師としてやる授業や講演は、個人事業主ならセミナーに、学生からの相談は、カウンセリングやコンサルに相当すると思っています。
でも、大学非常勤講師として、つまり組織の一員としてやるのと、個人事業主としてやるのとでは、やり方が大きく異なります。この違いを知ることで、双方のメリット・デメリットが分かるのではないでしょうか。
同じことを話すのに、大学の授業とセミナーとしてやるのは、どこが似ていて、どう違うのでしょうか?そのことについて考えてみたいと思います。
①内容(カリキュラム)に関する裁量
大学の授業では、扱う内容の大枠は決まっていますが、授業の中身は個々の講師の裁量に任されています。セミナーの場合も、例えば企業、団体、行政等から依頼されたものであれば、大枠は決まっています。よって、非常勤講師としてやるのも、個人事業主としてやるのも、大差ありません。
②会場を押さえることについて
大学の授業は、大学で行うので、会場(教室)を自分で押さえる必要がありません。大学の教務があてがってくれます。プロジェクターやパソコン、マイク等の機材も揃っていることが多いし、無料です。
それに対して、個人でセミナーをやる場合は、会場を自分で押さえなければなりません。機材もレンタルか自前です。当然、経費が(かなり)かかります。
③スタッフについて
大学の授業では、TAと言われる学生のアシスタントをお願いできる場合があります(百人を超すような大人数の授業が多い。大学による)。大学の経費でやるので、講師が人件費を負担することはありません。TAは大学からアルバイトとして雇われており、大学から給与が出ます。
それに対し、個人でセミナーを開催する場合は、受付等のスタッフは、講師が自ら依頼するので、人を探すのも、人件費も自前です。
④資料の印刷代について
大学の授業では、授業で使う資料は教材として印刷ができるので、無料です。大学によっては印刷サービスがあるので、事前にお願いすれば、無料で印刷をしてくれます。
セミナーの場合は、印刷は自分で行うか業者等に頼むことになり、当然費用がかかります。
⑤履修者や動員人数
大学の授業は、学生が履修届を出すので、講師が自ら履修者を集める必要は全くありません。ちなみに、大人数だろうと少人数だろうと、1コマ当たりの給与は変わりません。
それに対してセミナーは、参加者を自ら呼びかけ、宣伝する、つまり集客をする必要があります。動員数が多ければ、それだけ利益が出ますが、逆に全く集まらないと、大きな赤字になってしまいます。
⑥収入
授業の場合だと、講師として雇われているので、通常は1コマあたりで計算をして、月給として支払われています。履修者の数にかかわらず、講師料は変わりません。極端なことを言えば、履修者が1人であろうと、200人であろうと、講師料に変わりありません。
それに対して自分が開催するセミナーは、セミナーの料金を自分設定するので、1人あたりいくらという計算になります。経費はかなりかかりますが、人が多く来てくれればくれるほど、収入が多くなりますが、人が集まらなければ赤字になってしまいます。
両者の違いを知って、それをどう生かすか。
①~⑥に分けて考えてみましたが、大学非常勤講師として「授業」をする最大のメリットは、
①経費がかからない、②赤字のリスクがない、③授業に集中できる
ことです。
デメリットは、動員数が多くても、一定の金額しかもらえないということです。
一方、個人事業主として「セミナー」を開くメリットは、
大きな収入が得られる可能性がある
ことです。
デメリットは、①セミナーで話すこと以外に、集客などやることが膨大にある、②経費がかかる、③赤字になることもある
ことです。
ただし、上述のように、どれだけ良い授業をしても、たくさんの学生が履修していたとしても、お給料は変わりません(これは専任教員も同様です)。
今よりも収入を上げたいのであれば、大学非常勤講師として経験を積み、質の高いや授業・講演内容、つまりサービスとして自分が提供できるコンテンツの質を高めてから、
個人事業主としても「セミナー」を開催する
ことが考えられます。
授業としてやるのも、セミナーとしてやるのも、結局は質の良い授業・セミナー、つまり質の良いサービスをいかに提供するかが大事だと思います。大学非常勤講師にとって「授業」とは、質の高いサービスを提供するための大切な場であり、さらに磨きをかける場でもあるのです。