専任教員との格差是正の可能性(待遇編)

大学非常勤講師と専任教員の間にある格差について、時折ニュースで報道されています。格差があることは事実ですし、当事者として、非常勤の待遇がもっと改善されるべきだと思っています。でも、その一方で、現状を嘆いている暇があるのであれば、今の立場(大学非常勤講師)で、できることをしておくというのが、私の基本的なスタンスです。

 

以前の当ブログに書いた、「大学非常勤講師のワークパターン」「研究を仕事にする方法①~③」もその試みの一つです。これらの記事では主に収入を上げることについて書きました。今回は、給与以外の”待遇”について検討したいと思います。

 

その前に、専任教員なら当たり前に”保証”されていることから、非常勤との格差是正の可能性を考えたいと思います。

 

専任教員なら当たり前に”保証”されていること

専任教員は、大学の正規職員なので、いろいろなことが”保証”されています。例を挙げると…

  1. 毎月給与が安定的に得られる。
  2. 賞与がある(例外あり)。
  3. 社会保険(年金、健康保険、雇用保険、労災)に加入できる。
  4. 福利厚生(例.健康診断が無償で受診できる、スポーツ施設等が割安で利用可)。
  5. 研究者番号が付与される。
  6. 大学から研究費(例.年額◯◯万円)が支給される(例外あり)。
  7. 自分の研究室が与えられる
  8. コピーカードの支給 など

上記の1~8の例は、専任教員でも保証されていない場合もありますが、非常勤講師に保証されていることは当たり前ではないと思います。もし保証されているものがあったとしても、1つか2つあれば良い方なのかもしれません。

 

それでは、どうすれば、待遇面で専任教員に近づくことができるでしょうか?そこで、多くの非常勤講師が、大学を掛け持ちしているという事情に着目してみました。

 

複数の大学に出校していることを活用!

 
私の場合、今年度、5つの大学で授業を担当、1つの大学の某研究所で研究員を、またさらに別の大学の某研究所で臨時職員(史料整理)をしています。計7つの大学に出校しています。7校は多い方だと思いますが、2~3の大学に出校している非常勤講師の方が多いと思います。
 
大学が違えば、当然待遇も異なります。以下の記事にもそのことを書きました。
ここで、自分の場合を例に、非常勤講師が受けられる”恩恵”を、大学別に【表】に整理してみました。
 
【表】大学毎の待遇の違い(例)

  A大学 B大学 C大学 D大学(研究所) E大学 F大学(研究所) G大学
健康診断の受診(無償) × × × ×
乳がん検診(無償) × × × × ×
インフルエンザ予防接種(有償) × × × × ×
研究者番号の付与 × × × × ×
研究費の支給(コピーカード含む) △(1000枚コピーできるカードが年1回支給) × × × △半期で50枚分×2回まで支給 ×
研究室 × × × △共同研究室 × × ×
ロッカー等 ◯段ボール2箱分のスペースがあるロッカーが使用可(申請制) ◯申請すれば、プリント類を入れておくオープン棚が支給 × ◯自分専用のロッカー、本棚あり(申請制) × ×
給茶のサービス(無償) ◯(給湯室のカードキーが支給され、中にあるお茶、水等が自由に飲める × × ◯(休憩時や昼食時にお茶、コーヒー、お茶菓子などをいただく)
 
 
 
※G大学は、秋学期(集中講義)で担当するため、不明。
 
こうしてみてみると、他の大学と重なる場合もありますが、大学によって違いがあることが分かります。この違いを生かし、大学毎の”恩恵”を組み合わせるということです。つまり、一つの大学ですべてのことを満たすことができなくても、複数の大学の掛け持ちをしていれば、異なる恩恵が受けられる可能性が高く、結果的に専任教員の待遇に多少なりとも近づけるという考え方です。
 
私の場合、掛け持ちしている大学が多いということもあり、専任教員であれば”恩恵”に与れるもののうち、①大学から支給される研究費、②研究室(個別あるいは少人数の)以外は、概ねカバーできています。
 
ご縁があった大学が、非常勤講師の待遇として恵まれているのかもしれません(特にA大学)。少なくとも、大学によって、非常勤講師の待遇が異なっていることを知り、その違いを生かす手はないでしょう。
 
大学側からはサービスがあることが説明されなくても、相談や申し出たことにより待遇が改善されることもあるので、大学側に相談してみる価値はあると思います。
 
実際のところ、A大学に個人が使える大きなロッカーがあることを知りませんでしたが、担当している科目と履修者が増え、印刷物の置き場所に困っていたところ、講師室のスタッフの方に声をかけていただき、ロッカーの存在を教えていただいたことがありました。
 
もし、いくつかの大学から同時にオファーをいただき、すべての仕事が受けられないという場合は、このような待遇に着目して選択するのも、非常勤講師として生きる上で有効な方法かもしれませんね。